自然薯

自然薯

『アルギニン』 「山のうなぎ」とも呼ばれる自然薯は、昔から強精作用があるとされています。 実際に、自然薯には生殖能力を強めるアミノ酸の一種『アルギニン』が豊富に含まれています。 近年注目を集めているアルギニンは、強壮の強化、婦人病、肝炎、疲労回復などに効果があるとされています。

主に地下に出来る長いイモの部分を食用にし、ムカゴも食用にする。根茎(芋)とされる担根体は、滋養強壮がつくとして食用・薬用に利用されており、根茎にはデンプン、粘液質のムチレージ、アミラーゼ(ジアスターゼ)、マンニット、コリン、アルギニン、アミノ酸、サポニンなどが含まれている。根茎の汁が肌につくとかゆみを感じるときがあるが、根茎に含まれるサポニンによって肌が刺激されるためで、アレルギー体質の人は強く感じるときがある。ムチンは、たんぱく質の吸収を促して、血糖値の上昇を抑制し、コレステロールの低下にも効果がある。栄養素としてはビタミンB群、ビタミンC、カリウム、食物繊維を含む。

食用

地中に長く伸びる根茎をとろろ芋として食用にする。むかごは主に加熱調理して食用にするが、生食もできる。そのままの状態だとカリカリという食感が楽しめ、すりおろすと芋同様の強い粘りがある。むかごは、時間をかけてよく茹でたあとに塩を振って食されていて、とろろ芋同様に滋養強壮によいといわれている。

生食の可能な理由はヤマノイモが多量に含む消化酵素アミラーゼがデンプンの消化を促進するためといわれている。ただし近年の研究では、これを否定する発表もなされている。

とろろすりおろしてから白醤油や出汁などを加えてのばしとろろにするのが代表的な調理法である。ナガイモのとろろと比較すると遥かに粘り気が強い。とろろを伸ばして麦飯ないし麦入り米飯にかけた「麦とろ」があり、東海道五十三次の鞠子宿(現、静岡県静岡市駿河区丸子)の名物とされたが、鞠子宿のとろろ汁は、自然薯を味噌でのばしたものが供される[13]。岡本かの子の随筆「東海道五十三次」にも、丸子で食したとろろ汁について「炊き立ての麦飯の香ばしい湯気に神仙の土のような匂いのする自然薯は落ち付いたおいしさがあった」とある。この宿駅のとろろ汁の店は「丁字屋」(慶長元年(1596年創業))であるとその名が『東海道中膝栗毛』に明記されており、この店は浮世絵師の歌川広重によっても描かれている。松尾芭蕉に「梅若菜、鞠子宿のとろろ汁」という俳句があり、店のそばの句碑は文化11年(1814年)に建てられたものである[14]。とろろ芋をすりおろしたものを「山かけ」と称し、「まぐろの山かけ」や「山かけ蕎麦」があるが、こうした山かけの料理や、うどん等にあえて自然薯のとろろ使用をうたった飲食店もある。また、自然薯をそば粉に練り込んで打った自然薯そばもそば処で出されている。伝統料理芋粥は、平安時代を背景とする物語(芥川龍之介の小説『芋粥』やその原典『今昔物語集』中)に登場するが、これは皮を剥き薄切りにしたヤマノイモを、アマヅラの煮詰め汁で炊いたものであり、サツマイモ入りの穀物粥であるいわゆる芋粥とは根本的に違う。これは『群書類従』に収録された鎌倉時代の宮中料理次第事典『厨事類記』の、菓子の部類についてのうちにその調理法などが記載され、文章は以下である。

薯預粥ハ ヨキイモヲ皮ムキテ ウスクヘキ切

—厨事類記

ヤマノイモを利用した米粉の麺類である薯蕷麺は、『日葡辞書』(1604年)に「Ioyomen ジョヨメン」記載があり、江戸時代後期に塙保己一(1821年没)が著した叢書『続群書類従』(料理物語 – 飲食部)の章にて「しよよめん(薯蕷麺)」を紹介している。内容は端的に食材と料理法を載せ、文章は以下である。

ヤマノイモを利用した米粉の麺類である薯蕷麺は、『日葡辞書』(1604年)に「Ioyomen ジョヨメン」記載があり、江戸時代後期に塙保己一(1821年没)が著した叢書『続群書類従』(料理物語 – 飲食部)の章にて「しよよめん(薯蕷麺)」を紹介している。内容は端的に食材と料理法を載せ、文章は以下である。

山の芋を細かにおろし、もち米の粉六分、うる米四分をこまかにはたき。山の芋にてよきころにこね。玉をちいさうして、きりむぎうち申ごとくに、うち候。茹で加減は、にまううきあがる時節。是も汁は切麥同前。

—塙保己一、続群書類従

現在は薯蕷麺(いもめん)と呼び、『続群書類従』同じくもち米とうるち米の粉、ヤマノイモを原料とした麺を言う。ヤマノイモは、薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)、かるかん、栗きんとんなど、和菓子の材料にもなる。製菓用の粉末状の製品もある。その他とろろを出汁でのばさずに海苔に包んで揚げる料理もあり、磯辺揚げと呼ばれている。ヤマノイモを生のまま短冊切りなどの食べやすい形に切って、他の生野菜と共にサラダにする食べ方も現代では行われている。断面に若干の粘り気があり、オクラのような食感が楽しめる。

薬用

『古事記』(712年)や『日本書記』(720年)の時代から薬用として使われていたとみられている。

皮をむいて天日乾燥した担根体(根茎)は、野山薬(のさんやく)または土山薬(どさんやく)と称され、生薬になる。山薬(さんやく)は本来は中国原産で栽培されるナガイモ(通称:トロロイモ)の漢名であるが、ヤマノイモまたはナガイモの担根体を生薬にしたものもこう呼ばれており、栽培種も同様に用いられる。これは日本薬局方に収録されており、滋養強壮、止瀉、止渇作用があり、腸炎による下痢止め、夜尿症、頻尿、寝汗、咳、喘息、腰痛に効用があるといわれており、薬効はナガイモ(山薬)も同じである[2]。八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味丸(ろくみがん)などの漢方方剤に使われる。生薬にする根茎は、秋にヤマノイモの葉が黄変してから冬季にかけて根茎を掘り採って、頭の部分を切り取って水洗いし、竹べらで皮を剥ぎ取って、長さ10センチメートルくらいに切り、天日で乾燥して調整される。

民間療法では、乾燥した根茎1日量3 – 10グラムを水400 ccで4分の3になるまで煎じ、3回に分けて服用する用法が知られる。また、生食しても同様の薬効が期待できる。咳、喘息には痰が切れにくくカラ咳の人によいとされ、生の根茎をすり下ろして、砂糖を加えて熱湯を注いで飲む。乗り物酔いする人や、吐き気のある人への服用は禁忌とされている。滋養強壮には根茎をそのまま生食するか、山薬酒をつくって就寝前に1日盃1杯飲用する。山薬酒は、山薬を細かく砕いて200グラムあたりホワイトリカー1.8リットルに漬け込み、2 – 3か月冷暗所に保存しておいてから、漉して作られる。

保存

晩秋から冬に掘り上げた生いもは、凍らせない程度に保存し、随時使用する。皮をむき、せん切り、輪切りなどを使いやすい大きさに切り、酢水につけてから水気をふき取り、冷凍保存袋にいれて保存する。保存期間は2週間。

自然薯の花

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